眠り姫の唇
「だって、冷蔵庫に卵がないんですもん。」
キョトンと答える瑠香に、岩城はキッチンをチラ見する。
「私今日の朝ご飯はハムエッグがいいんです。そんな気分なんです。」
寝ぼける岩城から抜け出すのにだいぶ時間をくった為、そろそろスーパーも開いている頃だ。
「あ、心配しなくても岩城さんの分も買ってきますから。」
「…ああ。」
なんだか固まっているボサボサ頭の長身男をそのまま部屋にのこし、瑠香は揚々と玄関を開けた。
近所に品揃えの良い巨大スーパーがあるなんて更に羨ましい。
瑠香はカゴに次々食品を入れていく。
卵にハムに食パン、レタスにトマトにシーザードレッシング。キッチンペーパーに油、それに塩こしょうも。
…さすがにフライ返しはあるよね?と若干不安になりながらもレジを済ませる。
メニューもただたんに自分が食べたいものばかり。
「別に岩城さんに気を使う必要ないもんねー。」
朝の事を思い出し、またプンスカ言いながら瑠香は岩城のマンションに帰ってきた。