眠り姫の唇
………‥
「…お前料理出来るんだな。」
「失礼な。」
目の前に広がる朝食らしいメニューに岩城は驚愕の表情を隠せない。
しかも料理というには余りにも単純なものなので、瑠香はもうちょっと凝ったメニューにでもすれば良かったと思った。
だって卵とハムを一緒に焼いて、
パンをトースターに突っ込んで、
レタス千切って、トマト切って、
その上にどばーっとドレッシングをかけただけなのである。
岩城のところに案の定塩こしょうはなかった。
なんで一味唐辛子があって塩こしょうがないのか。
調味料が揃ってないなんて、やっぱり岩城は料理の欠片もしていないに決まってる。
「岩城さんって朝いつも何食べてるんですか?」
パンを口に頬張りながら瑠香は岩城の顔を覗き込む。
「…朝は食べないか、通勤時にコンビニに寄る。」
「それはまた、健康とお財布に悪そうですね。」
「いつも自分で作ってるのか?」
瑠香はごくんとパンを飲み込んで、次にサラダに手を伸ばす。
「だってお金そんなにないですもん。」