気がつけば愛でした
泣きたくなるのをこらえていると、高柳がフッと笑った。
「面白れぇやつ」
「なっ…」
せっかく人が心配しているのに、と思った時、高柳の頭がフワッと静奈に寄せられる。
「た、高柳さ…」
「髪、乾かして。」
「え?」
「本当は動くのもしんどい」
「っ…はい…」
高柳が下を向いてて良かったと思う。自分が真っ赤になるのがわかったから。
素直に甘える高柳に正直、心臓がうるさいくらいドキドキしていた。
サラサラの黒髪をドライヤーで乾かしているときも、無防備な彼にいつもの高柳の姿が見られない。
それが静奈には嬉しかった。
「冷たくて気持ちいいな」
氷枕に頭を乗せてそう呟いた。
広いベッドに身体が沈みそうなくらい力を抜いて、隣の静奈を見上げる。
きっと朝から熱があったのだろう。今朝遅れたのも、身体が重くて、本当に家を出るのが遅くなったのかもしれない。
そんなことを静奈は頭の片隅に思った。
「ゆっくり休んで下さい」
「橘…」
「はい。」
高柳が手を伸ばし、静奈の腕を掴む。
「居ろよ。ここに。」
「っ…」
熱でぼんやりした瞳で、たまにでる俺様的な言葉。
静奈はなぜか逆らえず、辛そうに息を吐く彼の手を、ソッと握り返した。