ワケあり!
「もう森村には関わるんじゃない」

 家に帰ると――お目玉が待っていた。

 うーん、やっぱり。

 全部、見られていたのだ。

 絹も、さすがに言い訳のしようがなかった。

 が。

「と言っても、また首をツッコミかねないな。知ってることだけ教えてやるから、それでこの件は終わりにしなさい」

 はぁ。

 ボスが、本当にしょうがないという風に、大きなため息をつく。

 おっ!

 思わぬ人が、折れてくれた。

 絹は、味方の参戦に小踊りする。

 さっさと好奇心を満足させて、広井家に集中させたいのだろう。

 もともとは、桜の死因を探っていたら、渡部や森村にたどりついたのだ。

 しかし、祇園祭にあの反応は異常すぎる。

 本当に、森村に殺されるかと思った。

「あー」

 ボスは、一瞬ウツな表情になる。

 そんなに、いやなことを言わなければならないのか。

「アレが、青柳の分家の出で、毎年祇園に連れていかれてるのなら…おそらく、私の推測だが…」

 一瞬の間が、絹には何分にも感じられた。

「おそらく…種馬にされている」

 ボスは平然と、女子高生の前で、種馬と言い放った。

 さすがは、科学者。

 正答の前では、言葉の品性は関係ないらしい。

 しかし、絹はさすがに頭が真っ白になって、絶句してしまった。

 たね? え? たねっ?

「青柳一族は、大昔から織田の遺伝子コーディネーターだ」

 えと、そうか、変態の話か、うん、そうか。

 混乱したまま、絹は変な単語で自分を納得させようとしたのだった。
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