ワケあり!
「冥王星が…ないわ」

 CDのパッケージをひっくり返して曲名を見て、絹は小さく呟いていた。

「あ、そっか…冥王星って、惑星から除外されちゃったんだよね」

 了が、ぽんと手を打つ。

 なんだか可愛いそのしぐさに、絹はくすっと笑ってしまう。

 でも、多分彼の言葉は違う。

 パッケージを見る限り、この曲が作られたのは、いまからちょうど100年くらい前。

 逆だわ。

 気づいた。

 逆だ――この曲が作られた時、まだ一番遠い冥王星は見つかっていなかったか、惑星と定められていなかったのだ。

 だからこの曲は、海王星までで終わってしまった。

 一番最後に惑星の仲間に入り、一番最初に仲間から外されてしまった遠い遠い星。

 冥王星自身、こんな遠い星で自分の論議をされているなんて、きっと知らない。

 自分の歌だけがないなんて。

 きっと知らない。

「絹さん?」

 パッケージを見つめたまま、絹が考え込んでしまったため、了に呼びかけられる。

「あ、ごめんね…」

 でも、CDから何となく手が離しづらい。

「プレゼント…それにするの?」

 考えてもいなかったことを聞かれて、絹はふと動きを止めた。

「京さん、クラシックは好き?」

 質問に、了はウーンとうなる。

「聞いてるの、見たことはないなぁ」

 確かに、そんなタイプには見えない。

「うん、これにしよう」

 絹は、悪戯心で笑みながら、もう1枚CDを取った。

 2枚。

「え、もう1枚は?」

 言葉に、彼女はにこっと目を細める。

「自分用よ」

 2枚のCDを持ってレジにいく絹に、なぜか了も真似して1枚取る。

「それは?」

 絹の質問に、了もにこっと笑った。

「自分用だよ」

 真似っこさん。

 二人で、顔を見合わせて小さく笑う。

 京に贈る時には、カードを添えるのだ。

『冥王星から 愛をこめて』

 いまも確かに在るのに、いつか忘れられていく、絹と同じ運命の星。
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