ワケあり!

夏の陣

 家に戻り、再び月曜から学校、という日常に戻ったが、すでにクラスは夏休みの話でもちきりだった。

 祭日の関係で、今週が終わればもう、休みに入るのだ。

 部でも、観測合宿の日程を決めたり、慌ただしい。

 他の部も、同じようにばたばたしていた。

 そんな、七月十五日(火)のことだった。

 将と部室に入ろうとしたら、京と了が出てくるところだった。

「将、部活休んで帰るぞ…西のバーサンがやばいらしい」

 京は、そのまま次男の腕を掴んだ。

 あらら。

 どうやら、誰か危篤のようだ。

「絹さーん、今日送っていけないけど、ごめんねー」

 了が、ばたばた手を振る。

 それに、小さく手を振り返し、絹は部室に入った。

 つまらなくなりそうだ。

 ふぅ。

「高坂さん、こんにちはっ…あれ、広井くんは?」

 きょろきょろしながら、宮野が入ってくる。

 廊下で、会わなかったようだ。

「身内の方が、誰かご病気みたい」

 状況によっては、明日も休みかもしれないなぁ。

 説明しながらも、絹はテンションを下げていった。

 広井ブラザーズがいないなら、絹が学校に来る理由もないのだから。

「そうなんですか…あ、じゃあ高坂さん、今日、うちの車で一緒に帰りません?」

 将がいないため、宮野もテンションが下がりかけたようだが、絹に掴まって上げ始めた。

 パン(将)がなければ、ケーキ(絹)を食べればいいじゃない――戦法だ。

 絹は。

「いいわ、たまには歩いて帰るから」

 にべもなく、断った。

 彼女と同じ車内で、話すことなど何もないのだ。

「そう…ですか」

 しょぼん。

 パンもケーキも食べそこなった宮野は、さすがに肩を落とす。

 後から思えば。

 送ってもらうべきだった。
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