ワケあり!
見えないはずの桜の過去に、色がついていく。
古いしきたりから逃れるため、彼女はおなかの中の京に、全てを賭けたのだ。
「でも…子供ができたからって、よく無罪放免になったわね。悪党らしく、報復くらいするものじゃないの?」
確かに桜は死んだが、それは随分後のことだ。
少なくとも、了が生まれた後。
「ああ、それ? 最初は、望月の家が娘を死んだ扱いにしたんだよ、青柳を懐柔してね。当主の嫁候補に逃げられたなんて、あまりに聞こえが悪いだろ?」
桜の親心としてか、はたまた保身のためか。
どちらかは分からないが、少なくとも親は、チョウと別れさせようとは思わなかったらしい。
「ただ、賢い女のはずなのに、彼女はひとつだけミスをした」
少し、大きな通りに出る。
人も多くなり、屋台も並んでいる。
「八坂さんに、お参りに行こう」
強く手を引かれた。
絹は、八坂さんとやらに興味はない。
それよりも、渡部の言うミスが気になるのだ。
「望月桜は、何をしてしまったの?」
カラコロ。
鳴る下駄と喧騒で、聞こえないフリをされるかと思った。
「家族旅行さ」
だが、彼は答える。
絹の脳内で、猛烈なスピードで記憶がめくられる。
「もう、ほとぼりがさめたと思ったんだろうねー…でも、バカだよ、祇園祭に来るなんて」
ああ。
甦った記憶を確認するのと、答えあわせは同時だった。
もう大丈夫、青柳の家に近づかなければ大丈夫。
読み違った桜。
そして、生きていることを知られる。
サクラ――チル。
古いしきたりから逃れるため、彼女はおなかの中の京に、全てを賭けたのだ。
「でも…子供ができたからって、よく無罪放免になったわね。悪党らしく、報復くらいするものじゃないの?」
確かに桜は死んだが、それは随分後のことだ。
少なくとも、了が生まれた後。
「ああ、それ? 最初は、望月の家が娘を死んだ扱いにしたんだよ、青柳を懐柔してね。当主の嫁候補に逃げられたなんて、あまりに聞こえが悪いだろ?」
桜の親心としてか、はたまた保身のためか。
どちらかは分からないが、少なくとも親は、チョウと別れさせようとは思わなかったらしい。
「ただ、賢い女のはずなのに、彼女はひとつだけミスをした」
少し、大きな通りに出る。
人も多くなり、屋台も並んでいる。
「八坂さんに、お参りに行こう」
強く手を引かれた。
絹は、八坂さんとやらに興味はない。
それよりも、渡部の言うミスが気になるのだ。
「望月桜は、何をしてしまったの?」
カラコロ。
鳴る下駄と喧騒で、聞こえないフリをされるかと思った。
「家族旅行さ」
だが、彼は答える。
絹の脳内で、猛烈なスピードで記憶がめくられる。
「もう、ほとぼりがさめたと思ったんだろうねー…でも、バカだよ、祇園祭に来るなんて」
ああ。
甦った記憶を確認するのと、答えあわせは同時だった。
もう大丈夫、青柳の家に近づかなければ大丈夫。
読み違った桜。
そして、生きていることを知られる。
サクラ――チル。