ワケあり!
「すごすぎて…困るな」

 ひととおり説明を受け、操作し終えたチョウは、ため息と共にソファに沈んだ。

 既に2時間くらいは悠にたっており、多少の疲れはしょうがないだろう。

 しかし、その疲労とはまた違う系列の気がした。

「巧……本当に、うちの技術顧問で入らないか?」

 チョウは、真剣そのものだ。

「技術顧問?」

 ボスの目は揺らいでいる。

 技術顧問という肩書きが、魅力的なのではない。

 チョウに必要とされている事実が、限りなく魅力的なのだ。

「そう、技術顧問だ。これだけの技術を、友達だからと言って、タダでもらうわけにはいかん。予想の範囲を越えている」

 まあ、ボスの価値を高く見てくれたことは、同意する。

「うちの技術屋どもに、これらの出所を聞かれて、サンタさんがくれました、と答えさせる気か」

 チョウは熱弁をふるう。

 ボスの目はもう、釘づけだ。

 絹は、正気に戻すため、座っているボスの後ろに回り、肩に手を置いた。

 はっと、ボスが揺らめく。

「おじさま…」

 今日の絹は、島村の代理だ。

 だから、ボスを守るのが最優先。

「おじさまは、先生を守れます? 全世界の…先生の技術を悪用したい悪者全部から…先生を守れますか?」

 微笑んでみたが、目までは笑えなかったかもしれない。

 しかし、本気を伝えるには、そのほうがいいだろう。

「絹!」

 振り向きながら、ボスが叱咤の声を上げる。

 しかし、絹はまっすぐにチョウを見ていた。

「なるほど…巧を囲いこむには、それくらい覚悟がいるということか…」

 ふぅ。

 彼の吐息は――天井に向かって吐かれた。
< 96 / 337 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop