アクセサリー
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「何て読むの?」
「〝きまぐれ〟だよ」
 ゴリメタルが言った。〝飢魔愚0〟と書かれたビラが教室にはられている。どうやらゴリメタルの考えたバンド名らしい。
 飢魔愚0の演奏可能な楽曲は五曲らしい。ゴリメタルは最初に飢魔愚0が一通り演奏し、隆一たちの演奏後に、同じようにもう一回最後に演奏したいと提案した。
「別にいいよ」
 二つ返事で徳さんは了解。隆一たち異論はない。
 暗幕で覆われた教室。ドンキホーテで買った小さなライトが小さなステージを照らす。隆一はバンドスコアをパラパラ眺める。今さら確認することもなく、レンタルしたアンプの上に置いた。
 十二時。ライブ開始は一時間後。隆一の出番は飢魔愚0のあとだから、まだ時間がある。
「何か食おうぜ」
 隆一は玄太郎を誘った。
 今日は日差しが暖かい。初日の学園祭はにぎやかで歩くのもままならないほど人が多い。
 ポップコーンやわたあめの屋台の前を通り過ぎる。こんな誰でもできることやって楽しいのかね? 隆一は冷笑的に眺めた。
サルやウシ、ディズニーのキャラの着ぐるみをきたり、アフロのかつらをかぶったり。ふだんできない衣装に身をつつんでこの空間、時間を楽しんでいる。
 隆一と玄太郎は屋台でフランクフルトと焼きそばを買うことにした。フランクフルトを食べていると玄太郎の携帯が鳴った。
「もしもし……、今、駅? 迎えに行こうか? ……うん、時間はまだあるよ……」
 玄太郎は携帯を閉じる。
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