身代わり王女に花嫁教育、始めます!
胸に刺さった小さな針で、カリムはリーンの心を抉った。

彼はリーンを好みではない、と言った挙げ句、王を誘惑せよ、と言う。


「王は……わたくしのような女が好みだ、と」

「そうだ。あなたのような女性がバスィールからやって来るとは。王も幸運な方だ」


カリムは皮肉たっぷりに頬を歪めて笑う。


(ダメだわ。彼は同情すらわたしに抱いてない。これじゃ、話してもどうしようもないわ)


親密な行為に心をほどいていたのはリーンのほうだけだった。

そんなカリムを、運命の恋人のように思っていたなんて。

わざわざ“砂漠の舟”を探し出し、オアシスまで連れて来てくれたのも、王好みの『娼婦のように淫らな身体』に開発するためだけ……。


快楽に火照った身体が恥ずかしい。リーンは両腕で自分を抱きしめ、テントの中に駆け込む。

小さな寝台に用意された衣装を握り締め、涙に濡れたのだった。


< 134 / 246 >

この作品をシェア

pagetop