身代わり王女に花嫁教育、始めます!
リーンはそれが王女の宿命と思いつつ、彼女に深い同情を寄せたのである。

そして、改めて自身の立場を思い悩む。


(わたしはどうなるのかしら? やっぱり、レイラー王女の侍女としてついて行くの? でも……カリムさまと顔を合わせたら……)


ついて行きたい。

ほんのわずかでも、カリムにリーン自身を見てもらえる可能性があるなら。ふしだらな女ではなく、カリムを愛しているのだと伝えたい。

このままバスィールに帰ってしまったら、おそらく二度と会うことはないだろう。


リーンはそのことも気にかかり、食い入るように使者を見続けた。

そして、彼が口にした言葉は……。


「――しかし、こちらの国王陛下の思し召しにより、あなた様には“このまま”そして“おひとりで”お輿入れいただくことになった、との仰せ。正妃様となられたあかつきには、国王陛下にご寵愛いただき、一日も早いお子様のご誕生を、と。――以上が大公陛下のお言葉でございます」


リーンは椅子に腰かけたまま、呼吸すら忘れたかのように身動きができなくなった。


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