身代わり王女に花嫁教育、始めます!
「大公陛下におかれましては……。侍女をバスィールに帰され、あなた様がさぞやお心細いことであろう、と案じておられました。ただちに新しき侍女を遣わしたいお気持ち、とのことで……」


リーンは使者の一挙手一投足に神経を張り巡らせた。

きっと、遣わされる新しい侍女のひとりが本物のレイラー王女に違いない。リーンはそう確信していた。


バスィールは代々、歴代のクアルン国王に大公家の血を引く娘を捧げて来た。

もちろん王女がいれば王女を、いなければ最も近親の娘を。

だが、先代のクアルン国王に捧げたのはかなり傍系の娘だったという。ハーレムで妃のひとりとして扱われたが、子供も残さず若くして亡くなった。

今のクアルン王国には、大公家の血を濃く受け継ぐ人間がいないのだ。


そういった事情からも、レイラー王女がクアルン国王に嫁ぐことは、生まれたときから決まっていた。

それも正妃として迎えられるのだから、大公は是が非でも王女を捧げるだろう。


(たった十六歳で恋も知らぬまま……いいえ、ひょっとしたら手を取り合って逃げた衛兵が初恋の相手だったのかも……お気の毒なレイラーさま)


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