身代わり王女に花嫁教育、始めます!
国の中央に向かうと砂漠の不毛地帯に突入する。

砂漠の宮殿はそれより手前にあるので、そこまで過酷ではない。だが、昼夜の温度差が激しくなり、とくに昼間は気温がすさまじく上昇し、砂嵐に遭う危険が高い。そのため、過ごしやすい夜に移動すると言っていた。

それは、先日までの花嫁教育でサクルから教わったことと同じだ。

そこから山岳地帯にある王都にたどり着くには不毛地帯を抜ける必要がある。それには、強い力を持つ水使いがいなければ不可能だ、とサクルは話していた。


「あ、あの……わたしの侍女はシャーヒーンだと聞いていたのですが、彼女はどこに?」

「シャーヒーンは陛下の近くに戻りましたが……。あの者は侍女ではありませんので、王女様に仕えることはございません」


その答えにリーンは驚いた。


「あの、では側近のカリム……いえ、サクルどのは?」

「カリム様でしたら、王女様の護衛に加わり、共に宮殿に向かいます。それから……なんと申されましたでしょうか?」

「サクルどのです」

「さあ、それは。申し訳ございません。そういった名前の方は、陛下のお近くではお聞きしたことがございません。お名前をお聞き違えておられるのでは?」


寝台の上で、リーンは息を飲んだ。


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