身代わり王女に花嫁教育、始めます!

(4)オアシスの惨劇

“五つ岩のオアシス”が不穏な砂嵐に見舞われる少し前。サクル王は久しぶりに、砂漠の宮殿に作られた湯殿にいた。

浴槽をたっぷりと満たしたぬる湯に体を浸す。彼にとって至福の時間だ。

そして、心と体を清め、神官としての力を充実させる時間でもある。


王の愛馬は丸一日かかる距離を半分以下の時間に縮めてくれる。リーンと別れてすぐに出立し、休憩も取らず夜明け前には宮殿に到着していた。

もちろん、白鷹シャーヒーンも一緒だ。


あと一日の辛抱となった。

明日の朝には、リーンは花嫁となるべく宮殿に到着する。長老も待たせてあるので、すぐにも床入りの儀式を行えるが……。

さすがにリーンも疲れているだろう。


(まあ、半日も休ませてやればよかろう。床入りも、とりあえず一度で許してやろう。まずは妻となる女だと認めさせれば……あとはなんとでもなる)


浴室の隅に控えた侍女が、王の表情に異変を感じるほど、サクルはご機嫌だ。


無事に婚礼まで済めば、レイラー王女はバスィールに送り返す。この宮殿の地下室に閉じ込めたアミーンにも恩赦を与えてやってもいいだろう。


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