身代わり王女に花嫁教育、始めます!
傷を負った兵士はサクルの顔を見るなりひれ伏し、泣きながら報告する。彼は反対側の警戒にあたっており、砂嵐に気づき駆けつけた瞬間、飛んできた木の直撃を喰らい昏倒したという。

薄れゆく意識の中で覚えているのは……。


「砂嵐の中に巻き込まれた馬たちがバラバラになり、私の近くにまで飛んできました。中には人の腕も……。よくは見えませんでしたが、砂嵐の中に何かが潜んでいたように思えてなりません!」

「我が花嫁となるバスィールの王女は? カリムに守るよう言いつけたが」

「はい。カリム様が懸命に守られていたと思います。これは、私の勘違いかもしれませんが……」

「かまわん。言ってみよ」

「はい。近くにいた数人の侍女とともに、おふたりが砂嵐に飲み込まれたように見えましたっ! 申し訳ございません、どうかご容赦を」


サクルは腰に吊るしたシャムシールを抜き、


「謝罪はいらん。せいぜい神に祈るがいい。護衛の兵士が守るべき花嫁を奪われたのだ。もし、花嫁の命なき場合、役立たずに戻る場所はないと思え!」


兵士の鼻先に剣をつきつけ、サクルは言い放った。


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