身代わり王女に花嫁教育、始めます!
――涸れ谷に巣くう邪悪なモノに力を貸した悪魔がいる。


およそ、地獄を追放されたような下っ端の悪魔だろう。

しかし、それだけでは納得ができない。奴らが意思を持ち、狂王の花嫁を狙うとは思い難い。 


(私を恨むのは人間だ。その誰かが悪魔を呼び出し、魔物を利用してリーンを連れ去ったのだ!)


全身の血が煮えたぎるようだ。サクルはその一瞬、怒りに我を忘れる。


砂が小刻みに震え、兵士たちの足もとから地響きが聞こえた。

次の瞬間――井戸の蓋が水圧で吹き飛んだ。轟々と音を立て、水は垂直に噴き上がる。

サクルの黄金の髪が熱砂の風になびき、兵士らの頭上には井戸の水が降り注いだ。


「許さん――絶対に許さんぞ! 目に物見せてくれる!」


サクルの叫びが砂丘に轟いた。


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