身代わり王女に花嫁教育、始めます!
「あの……では、アリーどのは王のお……」



――ギャーーーッ!



リーンの言葉を遮り、薄い光の向こうから闇を引き裂く女性らしき悲鳴が聞こえた。

アリーは岩壁から剣を抜き、リーンを背後に庇いながら入り口に切っ先を向ける。


「あ、あれは、あの声は女性のものでは……」

「おそらくは」


その直後、目の前を巨大な四肢が通過したのだ。

獣の……たぶん、砂嵐に潜んでいた魔物の足であろう。上から雨が降り注ぎ、リーンたちのいる穴倉の前の地面を赤く染めていく。

瞬時に、彼女の中でオアシスの惨劇が甦る。

アリーの腕をぎゅっと掴んだとき、視線が合い……彼はゆっくりとうなずく。 


(あれは人間の……なんてこと)


リーンは恐ろしさに気を失ってしまいそうだ。


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