身代わり王女に花嫁教育、始めます!
クライシュ族の小さなテントの中をリーンはずりずりと端まで逃げる。

中央に敷かれた絨毯からずり落ち、端のほうは砂の上だった。

追い詰められ、しだいに開いていく脚を閉じることはできず――天幕を背に、ひざを伸ばしたまま大きく開かされてしまった。

すると、カッハールは奇妙な笑みを浮かべ、リーンの左足首を掴んだ。

足の親指に赤く尖った舌が触れ、パクリと咥えられる。生温い感触にリーンの背中はぞわっとした。

そのまま、カッハールの舌が脚を辿って上がってくる。


「ああ……処女の匂いだ。こんなにいい思いができるとは思わなかった」


せめて砂のひと握りでもぶつけてやりたいと思うが……。


「無駄な抵抗だ。この男も興奮しているのがわかるだろう? お前は男を狂わせる、素晴らしくいい躯をしているな。狂王が花嫁に欲しがるはずだ」


意識はほとんどドゥルジに乗っ取られているようだが、彼の言うとおりカッハールの男性部分は見てわかるほど興奮していた。

サクルに見せられ、リーンの素肌に押し当てられたもの。

こんなことになるなら、サクルに奪って欲しかった。同じ地獄に落ちるのなら……。


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