身代わり王女に花嫁教育、始めます!
ドゥルジは喉の奥を鳴らして笑った。

その言葉にリーンは青くなる。


(わたしは……ひょっとして、サクルさまの命に関わることを口にしてしまったの? でも、サクルさまが王だなんて)


サクルが黙っていると、ドゥルジは勝利を確信して気をよくしたらしい。高らかに笑いながら、空の向こうに消えていこうとした。


「今だ! シャーヒーン!」


ドゥルジの真上から白い塊が突撃したように見えた。

それが純白の翼を持つ鷹であるとリーンが気づいたのは、ドゥルジが衝撃を受け砂上に落下してからのこと。

シャーヒーンは気づかれぬように空高く舞い上がり、夕日を遮るように直角に突っ込み、大きく鋭い鉤爪でドゥルジの頭をつかみ地表に叩きつけたのだ。


(シャ……シャーヒーンって言った? そ、それって)


白鷹は砂を巻き上げる低空飛行から、瞬時に上昇し、再び夕日を背に攻撃態勢を取る。

一方、ドゥルジ本人は何が起こったのか把握し切れていない様子で、ようやく立ち上がったところだった。


『くそ……グゥ』


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