身代わり王女に花嫁教育、始めます!
カリムは腰に一枚、白布を巻いただけの姿で立っている。彼の胸元は何にも覆われておらず、リーンの鼓動は跳ね上がった。


「さて、レイラー王女。王の妃となれば、当然、入浴にも寄り添っていただく。ハーレムに入れば、複数の女が王を取り巻き、寵愛を得ようと必死だ。しかし王は、何人もの女が群がることに不快感を露わにしておられる。そのため、ここしばらくはほとんどハーレムにお入りにならないのだ」


カリムはテント内をすたすた歩き、浴槽の端に腰かけ、右手に湯をすくい上げた。

軽く手をあげ、桶を運ぶ男たちを下がらせる。


「結婚後は、妃にすべてを任せたいと言っておられる。あなたに不満を持たれたら、王は再びハーレムに寄り付かなくなるだろう。あなたの責任は重大という訳だな」


初めて目にした男性の裸に気持ちを奪われていたリーンだが、カリムの言葉にハッと我に返る。


「お待ちください! 我がバスィールでは、未婚の娘が男性に話しかけることも、はしたないと言われます。ましてや浴室で男性のお世話など、老女か少年と決められておりますのに。大公妃……である、わたくしの母上も、そのようなことは」


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