Loose-leaf*放課後の甘いキス
――俺、見てるからさ!
夏川くんが行ってしまったあとも、そこから動けない私
…とくん
静かに動く鼓動に手をあてて、ファイルの表紙に目を移す
華舞踊……頑張って、みようかな
私には、ぜんぜん合わなくて
こんな係り、いやでいやでしかたがなかったけれど
でも、でも……
誰かが…夏川くんが、見てくれるなら―――
思わず緩んでしまう口元を手で覆い隠すと、突然左肩に重みがかかった
……!?
だ、誰…;;?
前に手がのびてきたかと思うと
そのまま動けない私に覆いかぶさるかのようにして、捕まえる
「夏川に話しかけてもらえただけで、ニヤついてんじゃねーよ」
「…!!!」
そんなイジワルなことをいうのは
私の知っている中で、一人しか存在しなくて
「み…見て…」
恐る恐る、言葉に気をつかいながら言うと
「さぁ?」
鼻で軽く笑いながらいうその表情は、まったく分からなくて
それが逆に、威圧感を感じさせる
「だだ、だって……!」
と、言いかけて息をのむ
そう…だった
あの日、あの場所で
私の淡いキモチは、知られてしまったんだ
「なに、深刻そうな顔してんだよ」
そういうと、私の頭に大きな手をあててくしゃくしゃっと乱し
ふらっとどこかへ消えてしまった
一ノ瀬くんが、行ってしまって
ほっとしている自分かいるように
なぜか…
なぜか、モヤモヤなキモチがあるのは、どうしてだろう
振り返っても、そこには一ノ瀬くんの姿は見えずに
ただ、寂しそうな余韻をのこした長い廊下が、私の目の前にまっすぐとのびていた――