Loose-leaf*放課後の甘いキス
‘夏川 日向‘
ケータイに、表示された新しい名前。
ただの漢字4文字だけれど、私には大きすぎるくらいの意味がちゃんとあって。
背中を向けて黒板に公式を書いている先生の目を盗み、そっとケータイを開く。
夢、じゃないよね……?
ほんとうに私、夏川くんと……―――――
そっと視線を上に上げれば
真っ白なシャツに身をつつんだ、夏川くんの背中が見えて
そんな姿にも、きゅんっとしてしまう自分がいる。
‘ 夜に、メールしていい? ‘
もちろん!嬉しい!
きっと、真菜ちゃんみたいな素直な子はそういうんだろうなぁ…
私は、小さく頷くことが精一杯。
でも…
でも。
‘ 夏川 日向 ‘
電話帳に入っているその名前は、現実そのもので
思わず緩んでしまう口元を、手で覆い隠――――
―――…ポンッ
……
?
…今、なにか背中に……
自分の机の周りをキョロキョロと見渡すと、そこにあるのはくしゃくしゃっと丸まった紙くず。
何だろう……?
誰かが、間違えて落としちゃったとか…?
ケータイをそっと制服のポケットにしまって、手をのばす。
近くの席の人たちを見ても、それらしきものを探してる人はいなく
迷った挙句に、紙を広げた。
……!!?
これ…って
どう考えても……
ドクンッ…
嫌な音が、体の中を包み込む。
さっと後ろを振り向けば
イタズラ顔でぺろっと舌をだした彼。