遠距離恋愛

唯のワンコール

顔を知って、メールができた。
それだけでメル友として充分だと思う。
メル友としてならね…。
メル友と言う関係から抜け出したい。
唯とメールをしているとそんな事さえ思う…。
唯とのメールは、宛先がメールアドレスではなく、電話番号で送れるようになっていた。
だから唯の電話番号はわかっていた。
でも電話をしようとは思っていなかった。
メル友だから…。
そんなある日、学校帰り唯とメールをしているとこんなメールが来た。
「ねぇ、ワンコールしていぃ?」
ちょっとドキッとした。
すると唯からワンコールがきてすぐ切れてしまった。
出てやろうと思ったけど怖くて電話に出る勇気がない。
ただ、電話したい気持ちはある。
もし出たら何を話そう?
きっと緊張して言葉を失うだろう。
僕もワンコールをして唯に対抗した。
お互いそんな事をしているうちに、とうとう唯のワンコールに出てしまった。
携帯に耳をあてると、
「出られちゃった。なんで出るの?」
と、半笑いで言っていた。
「唯が切るの遅いからじゃん!」
「こんな声してたんだ?」
「声高いでしょ?」
「全然そんな事ないよ。」
「なんだぁ……こんにちはって言うかはじめましてって感じだよね?」
「うん。はじめましてだね。もぅ家?」
「もうすぐ着くかな?」
「そっかぁ。今日バイトあるの?」
「今日はないよ。家着いたから切るね?」
「わかった。」
「メールするからさ。」
唯との電話は以外と友達感覚で話せた。
最初だけドキドキしたけど、後は今までメールをしていたからか、緊張はなかった。
初めて聞く声、とても綺麗な声で温かみがあって優しい。
………完全に惚れてしまった………。
メル友を好きになっていいのか?
好きになったところで、遠くにいるわけだし、付き合えない。
…できるのなら自分のものにしたい。
遠くにいても構わない。
でも、好きな気持ちをしまい込んだまま何もできなかった。
距離と言う大きな壁。
初めてその壁の大きさを知った。
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