太陽の竜と闇の青年
ルウが双剣の片方を取り出したのが見えた。


俺の嫌な予感が的中した。


ルウは自分の胸の刺青に剣を刺そうとしたのだ。


俺は今までにないぐらい早く走りそれを止めた。


肩に当たるか当たらないかのギリギリのところで止める。


ルウがゆっくりと俺を見上げた。


泣いては……いない……。


だが、目が虚ろだった。


俺は何度もこの目を見てきた。


牙城は仕事で上手くいかなかったときに、この目になって俺の家に来ていた。


それから、殺してきた奴らにもこの目をした奴がいた。


そんな奴らは毎回同じことをいう。


「あぁ、殺しにきたのか」


と。


人生に疲れた、そう言うのだ。


それから、暴落した家系の奴らもこのような虚ろな目をしていた。


とにかく、いつものルウの目ではなかった。


ルウの目からはいつもの明るさを感じられなかった。


そして俺をみて聞こえないぐらい小さな声で言った。


「もぅ、何が何だか分からないよ……」


ルウの手がズルリと剣から滑り落ちた。


その衝動で剣もキィーンという音を立てて地面に叩きつけらる。


ルウは自分の体を抱きしめるようにして小さく丸くなった。


「何で来たの……?一人にしておいてよ……」


ルウが初めて俺に文句を言った。


少し傷つく自分がいる。


「来たって何も出来ないじゃん……」


ルウはギュッと服を握った。


何も出来ない……。


その言葉が深く俺の心にのしかかった。


本当に俺はルウに何もできないのか……?


「もぅ、嫌だよ……。また、同じ気持ちになるのは、嫌だよ……」


服の隙間から、ルウが唇を噛みしめたのが見えた。


強く、強く。


その瞬間、俺は無意識にルウに手を伸ばしていた。


そして、ルウを引き寄せた。
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