太陽の竜と闇の青年
[壱]

俺は、音もなく障子を開けた。


「……おい」


俺が声をかけた男は、一瞬ビクッと肩を動かした。


「あ、あははははは」


俺のほうを見て苦笑した男の顔は整っている。


ただ、不自然な点があると言えばその目の色だ。


外国という和国の外に出れば目の色が様々だとは聞いているが、和国内でコイツのように目が赤い人は一人もいない。


「何をしている」


俺は目を細めて男を見た。


「いや、さ。最近、仕事が忙しそうだったから酒でも置いて帰ろっかなぁ……と、思ったんだ」


俺は男の隣に座って男が持っていた酒に手を伸ばした。


「俺はこれから少し出かける」


すると、男が渋面を浮かべた。


「またか?壱、少し働きすぎじゃねぇのか?」


俺は細めた目を戻して男をみた。


「牙城、心配してくれるのはうれしいが、これは国のためだ。サボる訳には絶対にいけない」


牙城は小さくため息をつくと、立ち上がり、俺の部屋から出ていった。


「ぶっ倒れないように注意しろよ」


帰り際にそんな言葉が聞こえたのは空耳だったのだろうか。


俺は全身真っ黒の自分の姿を見た。


「この手も、いつの間にか汚れてしまったな」

< 75 / 824 >

この作品をシェア

pagetop