先輩へ… 16年後のラブレター
「食堂の息子さんはまだここに住んでるかとかわかりますか?」

「うーん、ちょっとわかんないや。

オヤジさんと奥さんは住んでるけどね。」

そうか。わかんないって事は、ここにはいないんだろうな。

きっと結婚しているかもしれない。

16年も経ってるし。

私も結婚して子どもいるし。

それから、もうひとつ、気になっていたことを聞いてみる。

「去年の震災の時って、ここは大丈夫だったんですか?」

そう、震災の件があって、余計に会いたかった。

元気にやっていると思っているけど、ある日突然本当にいなくなってしまう。

そんなことがあの震災でいっぱいあった。

「ここはギリギリで津波が入ってこなかったんだよ。

前の年に、囲ってある壁をかさ上げしたんだ。

それがなかったら確実にやられてたよ。

ホントにギリギリの高さまで津波が押し寄せてきてたんだ。

マンホールからも水が出てきてさ。」

そんなすごいことになってたんだ。

知らなかった。

「食堂のオヤジさんと奥さんは、中学校の方に逃げたって言ってたな。

中学校の方に息子さんが住んでるって。そこに避難したって。」

息子さん!?
水野先輩は男三兄弟。
どの息子よ~!?

でも、先輩のご両親はちゃんと逃げてたんだ。

一安心。
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