先輩へ… 16年後のラブレター
守衛のオジサンの話を聞いているうちに、涙が溢れてきた。

自然の、津波の恐ろしさと、先輩のご両親が無事に避難していた事への安心感で涙が落ちた。


私は、とうとう守衛のオジサンに勇気ある一言を発していた。

「もしよかったら、息子さんを呼んで来て頂く事ってできますか?

私、どうしても会いたくて…」

こんなお願いをしてしまった。

守衛のオジサンも、さぞかしビックリしているだろう。

すると、オジサンは

「奥に入って行って大丈夫だよ。行っておいで。」

と言ってくれた。

でも、でも…

「もし、奥さんとかいたら悪いし…」

自分で行かなくても呼んできてもらうっていうこと自体、奥さんがいたら申し訳ない。

自分の旦那さんに元カノが訪ねて来るなんて、いい気がするわけない。

でも、私には今日しか…。

今会えなかったら、きっともう一生会えない。

お願いっ!!


すると、オジサンは

「じゃ、行ってくるよ。食堂のお兄ちゃんの名前は?」

と言ってくれた!!

「あ、水野さん!! 水野幸…!!」

「わかった!ちょっと待ってなよ!!」

先輩の家の方へ行ってくれた!

オジサン、ありがとう!!

先輩が今ここにいるか、いても会ってくれるかわからないけど、先輩に近づいた。

待ってる時間がすごく長く感じる。

子どもたちは、私が何をしてるのかわからず、キョトンとしてる。

こんなことをして酷い母でごめん。

でも、今だけ私を16年前に戻して!!
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