誘惑のクラン(血族)
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「お兄様」


数分後、香織が現れた。


大輪のバラのような笑みを浮かべ、優雅な動作で優真に近づいてくる。


「お兄様……」


背伸びをし、華奢な腕が優真の首に抱きつく。


甘い花のような香りが優真の鼻腔をくすぐる。


「お兄様が欲しいの。お兄様もでしょう?」


掠れた甘える声で囁き、唇が触れ合うくらい近づける。


「お前は我慢の文字を知らないようだ」


「うふふ、そんなものはずいぶん前からないわ。お兄様にも我慢して欲しくないの」


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