きすはぐあまこい

まさか…!


わたしはゆっくりと踵を返して、右足を後ろに引いた。

そしてそのまま猛ダッ―…


「ストップ」

語尾にハートのついた言い方と、肩に添えられる手には力が籠もっていて。


猛ダッシュなんて出来るわけがなかった。




「国原ぁーっ…」

許して下さいと言わんばかりにぐずるわたし。


「駄目だ」

乙女の涙にもなびかない一点張りの国原。



美術部の部室は美術室。

きっとこの先―…扉を開ければ沢木くんがいるに違いない。


となると、わたしは沢木くんにキスを―…



「む、無理っ」


そんなこと、恥ずかしくて出来るわけないじゃないっ!!
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