檸檬の変革
『私の写真は人間臭さが無いんだって。』
夢魔が少し淋しそうに言った。

僕は慌てて言った。
『僕は夢魔のそこが凄く惹かれたんだ。夢魔は素晴らしい写真家だと思う。』


夢魔は暗い闇の海を見ながら言った。
『ありがとう。だから、私は自分には無い感性の狩屋 伸司に惹かれたのかもしれない。彼の写真は人ばかり写っていて、羨ましかった。彼と出逢い私は変わった。そして私達はお互いどうしようもない位惹かれ合った。』


僕は夢魔の話を黙って聞いていた。
マリアはずっと静かに焚き火の炎を見つめていた。


夢魔は思い出しながら話している様にゆっくり話を続けた。

『私達は結婚するつもりだった。彼がその準備の為に一時帰国して、事故にあったの。
私は彼が死んだと言う実感がどうしても持てなかった。そしたら、村の呪術師が彼はもう一度ここに戻って来る。しかし、彼は別の人の中で生きてゆくだろう。って言ったの。その話を聞いた後に彼の臓器が誰かに移植されたと知ったの。』


僕は無意識に胸に手を置いていた。
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