c-wolf
「君がc-wolf?」


伽羅は足がふるえるのを必死に耐えていた。


「威濡が言っていた通りだよ」


「威濡って誰?」


時計台の上に立っているからなのか、風が強い。


強風でフードを被ることをあきらめたのか、c-wolfは黒い髪を風になびかせ、鋭い赤い目を伽羅に向ける。


その目は、まるで狼のようだった。


「ん~……。つい最近、君と会ったらしいけどね。君のほうはすっかり威濡を忘れちゃったみたいだ。威濡は君を忘れることはできないのに」


すると、c-wolfは首を傾げた。


「俺はそんな風に人に好かれることなんかした覚えないんだけど」


伽羅がクスリと微笑む。


「じゃあ威濡はフラれたわけだ」


c-wolfはパーカーのポケットに手を入れたまま、ジッと動かない。


呼吸をしているかどうかも怪しいほど動かない。


しばらくの間、二人の中を沈黙が続く。


その沈黙を破ったのは、c-wolfだった。


「君は俺に何のよう?」


伽羅が口をあけようとしたとき、風が吹いた。


とても強い風。


しかし、それは優しい風ではなかった。


喉につきつけられた鋭く短い剣。


今の一瞬で風になってc-wolfは伽羅の元まで来たのだ。


しかし、それは伽羅もできること。


伽羅が驚いたのは、まだ威濡よりも年下の青年がその動きをすることができることだった。
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