c-wolf
僕たちは長い時間を走っていた。

僕はゼルトの後ろを必死に追いかける。

ゼルトは足が異常に速いからついていくので精一杯だ。

そんな僕に少し配慮してくれたのか、途中からゼルトの走るスピードが遅くなった。

多分、この人は根は優しい人なんだろう。

そして、あり得ないくらい走り、時計の針が1つに重なるその時、

「「っ!!」」

2人同時に足を止めたのは森の奥深くにある教会の前だった。

そこだけ月明かりを浴びて白く輝いている。

だけど……。

どこか恐ろしく見えて神々しいとも思えなかった。

ゼルトがパーカーの帽子を被り直した。

鼻から下しかみえない。

目が見えないから何を考えているかがわからない。

その時、僕はココの異質な雰囲気に気づいた。

何かがおかしい……。

「……電灯だ」

ポツリと僕にだけ聞こえるようにゼルトが囁いた。

確かに、月明かりだけで教会は照らされているのに電灯がある。

電灯には明かりがついている。

それが異質な雰囲気を作り出していた。

僕が首を傾げたとき、電灯が消えた。

その瞬間、月明かりも消えた。

驚いて上を見上げると、そこには月なんてものはなかった。

ただ、闇が広がるだけ。

「……嘘だろ……」

電灯もつかない暗がりの中で、蠢くものが無数にあった。

そいつらはいつの間にか僕たちを囲んでいた。

……ゼルトは最初から気づいていたみたいだけど。
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