LOST ANGEL
「スゴい!素敵なお部屋だね!」
「全部兄貴の趣味だから、オレは分かんねーんだ」
「お兄さん?」
「そう。兄貴と2人暮し」
リビング、キッチン、風呂、トイレ、ベランダ、これらは全て兄貴が女受けがいいように家具をセッティングしている。
観葉植物だとか、アロマキャンドルだとか、ワインセラーに皮のソファー、大理石のテーブル、バカでかいテレビ、レトロなオーディオ、猫足バスタブ、その他至るところに高価な何かがある。
オレからしてみれば観葉植物以外は理解出来ない。
「ぷふぁ〜…」
杏奈がミニスカートも気にせず大の字になってソファーに座り込んだ。
「いいソファーなんだろうけど、感覚がないのが玉に瑕ね」
冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出して、杏奈とは違う1人掛けのソファーに座る。
「ねえ、あの時具合悪かった
の?」
「あの時?」
「わたしが話し掛けたとき。うずくまってたじゃん」
「ああ…。急に頭痛がしてね」
「しゃがみ込むほどの頭痛?病院とか行かなくてよかったの?」
急に姿勢を正して、杏奈は心配そうに尋ねてきた。
「最近ずっとなんだ」
「ずっと?」
「大学に行く途中に倒れて、病院に搬送されたらしいんだ。オレは記憶にないんだけど」