LOST ANGEL

「で、原因は分かったの?」

「1週間入院させられて、検査したけど異常はないって言われた」

「なんか、それって怖いね」

「オレも怪しいと思ってる。主治医はストレス性の頭痛だって言ってるけど、親も兄貴も何か隠してるっぽいし」

「病気なのかな?」

真面目な顔をする杏奈を見て笑いそうになってしまった。

「不治の病かもな」

冗談で言ってみる。

幽霊に心配されているなんて、変な話だ。

「…だったら気の毒だね」

「そっちこそ、どうなんだよ?」

「どうって?」

「だから、…何で幽霊になったのかってこと」

何故死んだのかとは、さすがに聞けなかった。

「交通事故。車に引かれたの」

あっさりと応えられて驚いた。

オレの表情を伺うように、にこやかに話を続ける杏奈。

「でも、死んだこと悔やんでないの。生きてても楽しいことなかったし。つまらない毎日だったか
ら」

その開き直った発言に思わず口が開く。

「だっ…、だったら何で、何でまだこの世にいるんだ?後悔してないなら成仏するだろ」

あまりに不自然なことが重なっ
て、言葉もしどろもどろになってしまう。

「成仏って簡単に言うけど、大変なんだから」

今度はプクっと頬を膨らませる杏奈。

幽霊であるにもかかわらず、表情が豊かである。

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