LOST ANGEL

「杏奈」

「却っ…」

「ダメなの?」

「いや…。それでいいのか?」

「お互い呼び捨ての方が気楽でしょ」

「杏奈がそれでいいならいいよ」

鼻の下をこすりながら、そっと振り返る。

杏奈は上から目線で笑みを浮かべていた。

悔しくなったオレは杏奈を無視してそそくさと自室へ向かった。

ドアを閉め、そのドアに寄りかかる。

女子高生に振り回されるなんて情けなさすぎる…

そのままベッドにダイブ。

「こんな自分が嫌だ…」

杏奈に指摘された独り言をベッドに吸収させていた。


「ねー!開けてよ!」

「ほっとけよ…」

杏奈に聞えない声で呟く。

「ひとりじゃ寂しいの!」

「……」

「ホントに寂しいんだから…」

「……」

「わたしには、慧斗しかいないんだよ」

それは単に杏奈の存在を知ってるのはオレだけという意味で、別に特別な感情がある訳ではない。

でも、そんな言葉にいつも揺り動かされる。

「勝手に入ればいいだろ」

「開けられないの」

そうだった…

立ち上がって、ゆっくりドアを引く。

そこには半べそをかいた杏奈がいた。

「怒ったの?」

「…いや、自分の問題」

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