LOST ANGEL
「自分の?」
「そんなことより、幽霊なら壁の通り抜けとか出来ねーの?」
無理に話題を変える。
「出来ない。わたし幽霊として失格なのかな?」
人間失格ならぬ幽霊失格。
思わず笑いそうになってしまっ
た。
「神様に聞いてみれば」
「くだらないこと質問するなって言われるだけよ」
そう言って彼女は部屋の中へ入ってきた。
「個室にしては広いね」
「八畳だから普通じゃね」
「そうなんだ。うち四畳半アパートだったから広く感じる」
生前の杏奈のことが本人から語られたのは名前と年齢以来だった。
「天井も高いね」
「ああ」
兄貴と違い、オレの部屋はとてもシンプルだ。
壁紙は白、備え付けのクローゼットを含め、ベッドも机も棚も全て薄い木目調の色で統一してある。
こだわりといえるのは星空のポスターを多く飾っていたり、部屋を暗くするとプラネタリウムになる装置を付けたことくらいだ。
「星、好きなの?」
杏奈がポスターを真剣に眺めている。
「うん。なんか癒されるから」
「わたしも空って好き。青空や夕焼け、星空は特にキレイだよね」
以外だった。
いまどきの女子高生がそんなことに関心を持つように思えなかったから。