LOST ANGEL
偏見してた自分に鳥肌が立つ。
「東京じゃ、こんな空見たことない。ネオンとか夜景っていうの?ああいうのもキレイだけど、やっぱり自然が一番だよね」
オレはしばし言葉を失った。
杏奈は部屋にあるポスター一枚一枚を感動するようにじっくり眺めて、最後に視線を机の方へ移し
た。
「教員免許試験の対策?」
あっ…!
「確実な教員免許取得方法…」
杏奈が読み上げたのは机の上に無造作に置かれた本のタイトルだった。
「慧斗、教師になりたいの?」
「いや、あの…両親が教師でさ、なりたいっていうか、なれって言われて」
「ふ〜ん。じゃあ本当はなりたくないんだ」
「いや、なりたくないって訳でもなくて」
何て言えばいいんだろう?
「将来の夢がないから、親に言われた道を選んじゃったってこと
か」
オレが説明に悩んだことを杏奈は簡単に口にした。
「そう…だな」
親の引いたレールに乗っている自分、意志がない自分、杏奈はきっと呆れていることだろう。
「仕方ないよね。こんな時代だもん」
「……」
彼女はいつも意外な言葉を返してくる。
打者と投手の駆け引きみたいに、変化球だと思ったらストレートだったり、思いがけない球が投げ込まれるのだ。