LOST ANGEL

「時代のせいにして、いいのか
な?」

「夢を追いすぎて、職に就けなくなるよりはいいんじゃない」

ずいぶんと冷めた返事だった。

「杏奈は夢とか、やりたいことなかったの?」

「小さい頃はあったかも。素敵なお嫁さんになるとか、子供らしい夢」

「子供のときだけ?」

「ある程度の年齢になったらバカバカしくなっちゃった。親も離婚して、お嫁さんなんて最悪だなって思ったし」

そう語る杏奈の表情は話している内容とは真逆で、暗さは全く感じず、むしろリラックスした笑顔に明るさがあった。

「あん…」

「そういえば夕飯は!?」

何か言おうとしたが、杏奈の声に驚いて忘れてしまった。

「晩ご飯食べてないじゃん」

「お腹空いた?」

「バカね。幽霊がお腹すくわけないじゃない」

そうか…そりゃそうだ。

「オレは食べなくていいよ」

「なんで?」

「腹減ってないし。いつも夜はあんま食わないから」

「ダメじゃん!一応病人なんでしょ。栄養つけないと」

杏奈は慌ててドアの前でじたばたしていた。

「開けて!」

「どうすんの?」

「料理、作ってあげるよ!」

オレはその光景を見て、たまらずクスクスと笑いだしてしまう。

< 37 / 89 >

この作品をシェア

pagetop