LOST ANGEL
「時代のせいにして、いいのか
な?」
「夢を追いすぎて、職に就けなくなるよりはいいんじゃない」
ずいぶんと冷めた返事だった。
「杏奈は夢とか、やりたいことなかったの?」
「小さい頃はあったかも。素敵なお嫁さんになるとか、子供らしい夢」
「子供のときだけ?」
「ある程度の年齢になったらバカバカしくなっちゃった。親も離婚して、お嫁さんなんて最悪だなって思ったし」
そう語る杏奈の表情は話している内容とは真逆で、暗さは全く感じず、むしろリラックスした笑顔に明るさがあった。
「あん…」
「そういえば夕飯は!?」
何か言おうとしたが、杏奈の声に驚いて忘れてしまった。
「晩ご飯食べてないじゃん」
「お腹空いた?」
「バカね。幽霊がお腹すくわけないじゃない」
そうか…そりゃそうだ。
「オレは食べなくていいよ」
「なんで?」
「腹減ってないし。いつも夜はあんま食わないから」
「ダメじゃん!一応病人なんでしょ。栄養つけないと」
杏奈は慌ててドアの前でじたばたしていた。
「開けて!」
「どうすんの?」
「料理、作ってあげるよ!」
オレはその光景を見て、たまらずクスクスと笑いだしてしまう。