LOST ANGEL
「なに笑ってんのよ?」
「だって…。杏奈どうやって料理すんの?」
「どうって…」
しばらく間があり、杏奈はハッとする。
そしてドアの前で座り込んだ。
「…そうだよね。わたし、包丁すら持てないや」
いつになくがっかりする杏奈。
「気持ちだけで嬉しかったよ」
「でも、ご飯…」
「うちの冷蔵庫には食い物入ってないから」
「そうなの?」
「いつもコンビニ」
冷蔵庫に食材が入るのは兄貴が女を連れてきたときだけである。
「ホントに食べないの?」
「うん。今日は久々外出て疲れたし、早過ぎるけど寝る」
「そっか…。じゃあ、わたしも寝ようかな」
杏奈が伸びをする。
「それ気になってたんだけど、幽霊も眠るの?」
「眠るよ。毎回生きていた頃の夢を見させられるけど」
立ち上がる杏奈。
オレは自然と彼女の動きに目を持っていかれる。
「その夢の中に成仏するヒントとかないの?」
「どうだろ…」
少し悲しい顔を浮かべながら、杏奈はオレの隣に腰掛けた。
って、どーゆこと!?
「あっ杏奈…どこで寝るの」
オレはゴクりとツバを飲む。
「どこって、ここベッドでしょ」
「いや…ここはオレのベッドだけど…」