LOST ANGEL
「別にいいじゃん。一緒に寝て
も」
「良くないって!」
オレは慌てて立ち上がる。
「なにヤラシイこと考えてんの。わたし幽霊なんだから、何も出来ないわよ」
そんなの分かってる!
「しかし…オレには姿は見えてるからだな…あの…」
「しかしって」
笑う杏奈。
でもオレにとっちゃ大問題だ!
「反応しちゃうってことでし
ょ?」
杏奈は言葉に戸惑いも恥じらいもない。
「…オレ、ソファーでいいや」
「ダメ!」
「なんで!?」
「ちゃんとベッドで寝なきゃ、身体に悪いよ」
だけど、女の子にソファーで寝てとは言えない…。
あっ、兄貴のベッド借りればいいか!
名案が思い付いた、そのときだった。
「…それに、ホントはね、ひとりが嫌なんだ…迷惑なのは分かってるけど」
声がだんだんと小さくなってい
く。
うつむいていて、どんな表情をしているのかすら分からない。
ただただ、気の毒に思えた。
「…じゃあ…背中合わせなら…」
他に選択肢がないんだから、仕方ない。
「いい?」
布団、買って置けば良かった。
オレが「いいよ」と返事をする
と、杏奈は「ありがとう」と言いながら、やっと顔を上げた。