LOST ANGEL
その目は少し潤んでいる。
さっきまで堂々と大胆発言していたのに…女ってマジ解らない生き物だ。
いや、この場合死に物か?
「どっちでもいいか…」
「何か言った?」
杏奈は笑顔に戻っていた。
「…なんでもない」
女が恐ろしいことは間違いない。
「暑いからさ、わたしが側にいれば涼しくて快適に眠れるよ」
そう言いながらヘアゴムを外す杏奈。
セミロングの髪がサラサラとキレイに流れる。
「…ゴム、外せるんだ?」
ついつい見とれてしまった。
「死んだときに身につけていたものなら自由に触れるの。このバッグの中身とかも」
髪をおろすと無邪気だった彼女が不思議と大人っぽく見える。
杏奈の話を聞きながら、そんな風に思っていた。
「だから服も脱げるんだよ。脱いでみる?」
「バカ!…やめろっ!」
「冗談だよ。ムキになっちゃってウケる。慧斗って可愛いね」
色々な意味で興奮してしまった。
すでにベッドの上でゴロゴロしている杏奈を見ていると、情けなさすぎて大きなため息が出た。
「もっとそっち行け」
「どっち?」
「オレ窓側だから」
「いいな〜」
「文句言うな」
ベッドは窓に横付けにしてある。
オレはいつもここから星のない空を眺めて眠っていた。