LOST ANGEL
街の光に照らされる空。
真っ黒な、無の空。
「電気、消すよ」
「うん」
リモコンを照明に向けてボタンを押す。
部屋が暗くなると、無数の星が部屋中に映し出される。
「なにこれ!」
杏奈が飛び起きた。
「部屋用のプラネタリウム」
「そんなのあるんだ!」
「高かったけどね」
「…すごい…素敵」
杏奈はしばらく星空にみとれていた。
「あれが北極星?」
天井を指差す杏奈。
「だな」
「…キレイだね」
杏奈は横になっても、ずっと天井の星たちを眺め続けていた。
オレは杏奈に背を向ける。
ひんやりと涼しい背中。
「ロマンチックって、こうゆうこと言うのかな?」
「ん…?」
「慧斗、彼女いるの?」
「いないけど」
「好きな人は?」
「それもいない」
返事をしながら虚しくなった。
「昔はいたでしょ?」
「いたってうちに入るのかな?」
「どーゆーこと?」
「中学とか高校で付き合ってた子はいたけど、なんていうか、あの頃は本気じゃなかった気がする」
「彼女のこと、好きじゃなかったの?」
「男ってバカだからさ、告白されたりすると好きじゃない子でも舞い上がっちゃったりして、で付き合って本気じゃないから結局振られる。その繰り返しだった」
オレは何でこんな話を聞かせてるんだ?