LOST ANGEL
「そうなんだ」
「こんな話聞いて面白いか?」
しばらく返事がなかった。
「慧斗…」
「ん?」
「この部屋で女と寝た?」
何を急に…!?
「別に変な意味で聞いてる訳じゃないの」
じゃあ、どんな意味かと聞き返したかったが、冷静に喋る杏奈がなんだか怖かった。
「…まぁ…、兄貴の連れてきた女と…何回か…」
いつも可愛いって言われて、女たちはオレを押し倒す。
いつもされるがまま…。
年上でも、年下でもオレはただのオモチャになる。
別に拒む必要もなかったし、兄貴はみんな知っていることだった
し、単なる成り行きだ。
特別なことなんかじゃなかった。
「この星の下で?」
「あんま記憶ないや…」
杏奈は何が知りたいんだろう?
「…わたしね」
「うん」
「キスもしたことなかったんだ」
「そっか」
「笑わないの?」
「え、なんで?」
「だって高校生にもなってだよ」
「別にそれはそれでいいんじゃない」
軽いオレなんかよりは、よっぽどいい。
「惨めじゃない?」
「純粋だってことだろ。惨めじゃないよ」
「純粋…?」
「ピュアね」
納得いかないような声で、彼女は話し続ける。