LOST ANGEL
慌ててリビングに向かう。
窓の外を見つめるように、彼女は立っていた。
「杏奈…?」
「慧斗のイビキうるさい」
「えっ?」
「嘘だよ」
と、笑顔で振り返る杏奈。
「なんだよ…」
ツインテールがあどけなく揺れ
る。
「慧斗のこと、何回も起こしたんだからね。それなのにちっとも起きてくれなくて、ぶっ叩きたかった」
「…昨日はなかなか眠れなかったんだよ」
「あんなに早く寝たのに?」
「原因はお前だ!」と、言ってやりたかった。
「つーか、今何時だ?」
「時計を見なさい!もう9時なんだよ」
なんだ…まだ9時か。
口に出すと杏奈に文句を言われそうなので、心の中で呟いた。
「ほら、早く顔洗って!出かけるよ!」
「どこに?」
「コ・ン・ビ・ニ!」
杏奈は弾むような声で応えた。
コンビニはマンションの目と鼻の先にある。
ほぼ毎日通うオレは常連の上だ。
「いらっしゃいませ〜。あ、おはようございます」
いつものバイトくんに頭を軽く下げる。
一緒にいる杏奈は、やはり見えていないようだ。
「なんか久しぶり」
杏奈は見えないのをいいことに店内をスキップして歩く。