LOST ANGEL
「ごめん。気が利かなくて」
喜ばせようと思ってたのに裏目に出てしまった。
「なんで謝るの?こんな素敵な景色が見れて最高だよ」
「…ホント?」
「………」
クスクス笑う杏奈。
「何だよ?」
「慧斗って女の子みたいだね」
えっ?
「いちいち優しすぎるんだよ。相手の機嫌気にしすぎ」
「だって…」
「ほらほら、そーゆー反論の仕方も女々しい」
女々しい!?
オレが世の中で一番嫌いな言葉をよくも軽々と口にしやがって。
笑い続ける杏奈を無視し、オレはおにぎりに食らいついた。
「怒ったの?」
無視する。
「女々しい上にお子様なんだね」
おにぎりをお茶でいっきに流し込む。
「悪かったな」
どうせオレは女々しいお子様だ
よ。
「悪くないよ」
無視する。
「そーゆー人、悪くないよ。わたしの周りは嘘つきな大人ばかりだったもん」
杏奈はどこか遠くを見ていた。
「…」
「小さい時、両親が離婚して3人姉妹だったうちの姉と妹が父親に引き取られたの。真ん中のわたしは母親に…」
「…小さい時?」
突然のカミングアウトに戸惑う。
「父の顔も、姉妹の顔も覚えてない。ただ、母が口癖みたいに言ってた。エリートの父は頭の良い姉妹だけ連れていったって。自分は出来の悪い娘を押しつけられたって」
「そんな…」
掛ける言葉が見つからない。