LOST ANGEL
杏奈の顔が目の前にあり、驚き、慌てボタンを押した。
「つぎ、とまります」というアナウンスが流れる。
「セーフ」
ホッとしている杏奈、でもその姿はオレの膝の上にあった。
なっ…なんで?
隣を見ると、おばあさんが座っていた。
どうやら寝ている間に車内が込んだらしい。
杏奈は平然とした顔をしている
が、オレの心臓がバクバクいっていた。
例え幽霊であっても、オレにとっては姿がハッキリ見える女の子なのだ。
しかも、何げに可愛かったりするから困る。
バスを下りても、心臓はまだ少し動揺している。
「今の見た?優先席にいい大人が堂々と座ってんの。殴ってやりたかった」
「…あぁ…そうだな」
「声が届かないってもどかしい」
いつも注意してたのだろうか?
彼女意外な一面を知る。
うずくまってたオレにも声をかけてくれた。
口は悪いが、優しい少女なのだ。
「で、高校は?」
「目の前!」
青々とした葉に包まれた建物は一瞬目を惑わす。
「…ああ」
「部活の子しか居ないけど、ヒントになるようなものある?」
そう言われると自信がない。
「ま、あれだ。杏奈のこと知ってる子を探そう」