LOST ANGEL

「あの…」

彼女に話し掛けてみる。

「はい?」

「えっと…」

「何ですか?」

少女の目は早くボールを返せと言っている。

「ちっ…千葉杏奈さんについて聞きたいんだ」

「取材の人?」

「えっ?」

「取材とかなら、勝手に受けるなって学校で言われてるんですけ
ど」

取材?

なんで杏奈の名前を出しただけで取材に繋がるんだ?

「マスコミの人なら直接学校に連絡して下さい」

「いやっ、違うんだ。オレは…杏奈さんの友人で、マスコミとかじゃなくて、ただ杏奈さんの学校での生活を知りたくて…」

少女は明らかに不審な顔をする。

「千葉さんとは1年のとき同じクラスだったけど、正直いって彼女のことはあまり分かりません」

早口で喋る少女からイライラが伝わってくる。

「同じクラスだったの?」

しかし、こちらも杏奈のためには譲れない。

「同じクラスだったけど、千葉さんはいつもひとりでケータイとかいじってるだけで、周りに壁作ってる感じがしました。友達もいなかったみたいだし、お弁当もどこで食べてるか誰も知らなかったし…って、もういいですか!?」

「あっ、ありがとう…」

ボールを手渡すと、彼女は逃げるように走り去っていった。

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