LOST ANGEL

「そうだ。慧斗くん、頭の方は大丈夫?」

相原が突然心配そうな顔をする。

「えっ?」

「あっ…、おっお兄さんから聞いたの。最近頭痛で悩んでるって」

「ああ。ストレスが原因みたいでさ、気にすることないって」

「さ〜あ、カレー食うぞ!」

兄貴が急に大声を出して立ち上がった。

「そうそう、カレー食べよう。慧斗くん、カレー作りたかったんでしょ?」

まあ、そうだけど…。

「先輩と一緒に作ってたんだ」

「えっ…」

「お前はカレー粉買いに行くのに何分かかってるんだ?」

そう言って肩に手を置く兄貴。

「あとは、そのカレー粉入れるだけ」

持っていたコンビニの袋を相原に奪われる。

何分って…そんなに時間かけてたか?

色々考え事はしてたけど…。

あっ!

相原との再会に驚いて、すっかり杏奈のことを忘れていた。

杏奈は変わらない体制でリビングの角にいる。

「杏奈…」

怪しくないように駆け寄って、小さく声をかける。

杏奈は仏頂面でこっちを見た。

「わたしのこと完全に忘れてたでしょ?」

「そんなことないよ」

図星をつかれてドキッとする。

「これから会食になりそうだね」

「だな…」

「慧斗の部屋に居ていい?」

「その方がいいの?」

コクりと頷く杏奈。

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