LOST ANGEL
さり気なく部屋に入るふりをして杏奈を入室させる。
「電気は?」
首を横に振る杏奈。
「ドア、開けて置く?」
それにも杏奈は首を横に振った。
「…寂しくないか?」
「大丈夫だよ。何でそんなに心配するの」
「そりゃ…」
あんなに落ち込んだ姿見たばかりだし…。
クスっと笑顔を浮かべる杏奈。
「心配してくれてありがとう」
「ゴメンな。兄貴、いつも突然でさ…」
「慣れてるよ。あの人もそうだったし」
あの人とは母親のことだろう。
「この部屋は星が見れるから退屈しないよ」
「なるべく早く終わらせるから」
それしか言葉が見つからなかっ
た。
「け〜いと〜!な〜にやってんだ〜!」
兄貴のチャラい声に呼ばれる。
「じゃっ!」
そう言って、オレは部屋のドアを閉めた。
テーブルの上にはレトルトで作ったとは思えないカレーがお洒落な食器に身を包まれて用意されていた。
そして兄貴お気に入りのワインも肩を並べる。
「慧斗くん、座って」
相原が自分の横のイスに招く。
「それじゃあ乾杯するか〜」
兄貴の口癖で幕が開いた。
「このワイン美味し〜い。慧斗くんは飲まないの?」
「今、薬飲んでるから」
「そっか。残念だね」