LOST ANGEL

カレーと酒だけのくだらない食事会は2時間も続いた。

いつの間にか兄貴と相原の先輩の姿はなくなっている。

この残された食器を洗うのはいつもオレの当番だ。

「片付け手伝うね」

ほろ酔いの相原が食器に手を差し伸べた。

「あっ、いいよ!」

オレは止めようとしてその手を握ってしまう。

「ゴメンっ」

離そうとした手を相原の熱い手が握り返してきた。

ドクン…

相原の目がオレに向く。

ゴクリと唾を飲んだ。

「はは、ホントに変わってないね慧斗くんは」

そう言って相原はクスクスと笑った。

「おっ…おどかすなよ」

そう言いながらも心臓はまだバクバクいっている。

「ね、部屋見ていい?」

「えっ?」

ちょっと、まった…!

「お部屋も変わってないのかな」

オレがもたついている間に、相原は部屋のドアを開けていた。

「あっ…!」

慌て駆け寄る。

が、手遅れだった。

「なにこれ。プラネタリウム?」

「あっ…ああ」

杏奈…?

「相変わらず慧斗くんはロマンチストだね」

相原の後ろからオレは杏奈を探した。

「電気つけてもらっていい?」

「えっ、あ、ああ…」

パチン

照明がついたとき、やっと杏奈を確認できた。

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